古美術商・小売店。

店により信用や鑑定力・資金力はまちまちだが、基本的には店の信用をベースに運営している所が多い為、比較的安定した買取りを行う所が多い。

特に刀剣や書・掛け軸等は、一流の専門店の場合は目が効き、買取りも高額が期待出来る。専門店の場合、鑑定料が必要な場合も在るので事前の確認が必要。

基本的にあまり小さな小売店や新しい店は、避けた方が無難

・メリット

老舗の専門小売店は買取り価格が安定している。特に専門分野では長年磨かれた鑑定能力と長年かけて構築された古美術商間の同業者間のネットワーク。培われた固定顧客が最大の持ち味である。

基本的に個人経営なので信頼関係を築きやすい。また、秘密保持や様々なノウハウにも熟達している。美術倶楽部の会員や博物館の顧問鑑定家という人たちもいる。見かけのみでは判断が難しい。

デメリット

 玉石混合で信用・資金・鑑定力・人員などの店毎のばらつきが大きいものです。一般の方にとって、ある程度、業界の内実を知らないとその人が業界屈指のエキスパートなのか、全く業界の信用もなく鑑定力も無い人なのかという判別は極めてつきづらいのが現実でしょう。

 しもた屋で壊れそうな店を出しているお爺さんが、古美術界では名が轟き、専門の研究者や、著名なコレクター、博学として知られる文化人、国立博物館の館長も一目おくような大物であったりします。逆にTVで有名な鑑定士と称してネットなどで大々的に宣伝している中年男性が、業界では詐欺師として知られた鼻つまみ者であったりと、外側から見る一般の人々にはよくわからない世界とも言えます。

 専門店程、フットワークが悪いのが常識。機動力に乏しいし、鑑定力があるほど一流品が集まることから目が肥えているので、「生活品に近い古道具類」「雑器」「骨董でもレベルが低い物」「流行している古道具類」の買取りに対しては、極めて消極的で査定評価が驚くほど低い。

 逆に、そうしたものに貪欲で機動力の在る所は古美術商としては、大した店で無い事が多い。そうした古道具類は、元来的に骨董屋や古道具商の領域となるし、他の知識や鑑定能力が必要なってきます。

 古美術商は平均して、専門以外の査定がかなり安価となる傾向にあります。特に古道具の買取りは期待できず、転売目的となる。特に輸送力、保管力がなく、マンパワーも弱い。個人経営ということもあり、機動力にもかけることになります。

 鑑定だけでほぼ口をつないでられるほどの目利きはそんな小所帯でも良いのです。私たちのような道具商とは違い、本来の美術商とは権能や名誉や名声そして金銭より、本当に美しいものを集めようとする傾向があるからです。むろん、道具にもベクトルは異なるかもしれませんが、用の美があります。

 古美術商にとって家具等の大型・中サイズの品物はほとんどNGです。より好みをされます。古美術商や骨董屋は知れば知るほど、ピンからキリまでおり、見かけだけでは判断できないし、店構えだけでも評価できません。老舗ならいざ知らず、急成長したチェーン店などはそれほど粗利を上げているということです。

 最近は中国バブルで誰もが中国書画などの鑑定家のふりをしてネットなどで広告を出すというような大変さもしいことになっているのですが、そもそも、長年研究と研鑽を重ねた専門研究者や学芸員、専門鑑定家でさえも、鑑定に数日かかるようなたいした逸品が、たいした修行もしていない、そこらの大学学士レベルが最上程度の古道具屋さんたちに、正確に鑑定できるわけは無いのです。

 本当に正直なら、顧客からマージンのみにとどめて、顧客の所有物しとして、古美術の一般マーケットでそれらを出すのが筋である。まあ、業者市もグルというケースもあるのです。もちろん、そうした悪質な業者は客を騙して適当な値段で買い取り、転売してぼろ儲けし、それを自らの「才覚」だとうそぶいています。悲しいことです。

 ただ、本来ならそうした品を所有する旧家や名家にはしかるべき鑑定レベルをもった骨董商がきちんと付いており、何代にもわたる取引で、決して顧客に損はさせないように取り計らってくれていたものです。しかし、それは遠い昔となりました。地方の良心的な古美術商や骨董商の多くが、地方が疲弊する過程で店をたたみ、亡くなった後に後継が絶えました。

 特に地方の城下町はひどい有様で、昔、師事させていただき色々と御教伝頂いた素晴らしい諸先輩方はほぼ鬼籍に入られたか、今の業界に嫌気がさされて廃業されたかという有様。むろん、大都市にはまだ優れた古美術商が残ってはいるが、質の低下は回避できない。なぜなら、買う側の人口が縮小し、買うお客さんの側のレベルも低下したからです。

 昔は恐ろしいお客がおられた。修行時代は叱責も含めて勉強させてもらえるような強いお客さん、そういう方々がおられた。芸大で修士をとり、鼻っ柱の高い若造の鼻・・・頭でっかちの慢心を粉砕していただいた。ものも怖いし、何より、人の奥行きというものは恐ろしいものでした。ただ、そうした人たちが減ったからといって、誰かを騙して買取りを行って良いわけが無い。彼らはものの美や、人のおくゆき、豊かな時間の移ろいを愛さず、お金のみを愛している。

 売る側が買う側を是非鑑定してください。

 つまり、古美術商を買取りを依頼される「あなた」が、古美術商や骨董屋さんを鑑定しなければならない時代になったということになります。派手な名刺をもち、良い服を着て、丁寧にしゃべり、良い時計をしていても、人を騙そうとしている自称「古美術鑑定家」には騙されないでください。人をよく見てください。経験から言えば、それっぽい人ほど、注意が必要です。

 弊社のスタッフには、お客さんに「自分をかってもらえ」と言っています。信用してもらい、次も呼んでもらえるようになりなさいということです。学歴や単なる知識ではなく、お客さんに損をさせない知識を持てと言っています。そうすれば次につながります。仮に弊社を辞めても、自分を磨き続ければ何かが残ると教えています。

 毎日が勉強です。そして、自分への問いかけが仕事ととして生きてくるのです。もちろん、私ども道具商と違い、古美術商ならより美について貪欲でなければなりません。

by Takeda

・追記
弊社では文化財クラスの場合は買いとりません。はっきり申し上げると、そうした学術レベルの専門鑑定家としての能力は持っていません。専門研究者レベルの知識は体系的研鑽の中で、長い時間をかけて培わないと身につくわけの無いものです。弊社では専門店や鑑定家を紹介する事で対応しております。「分らない古美術品」を分かったふりをするのは簡単ですが、それは詐欺です。中国美術品も贋作や模作の多い大変鑑定の難しいものを含みます。時に専門研究者でさえ、真贋をしくじるハイレベルの商材です。それらを大々的に宣伝して買取る店は要注意です。そうしたものはアドバイスを受けて専門鑑定家に依頼するのが正解です。